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Wed January 14,2009

Palm PreとPalm WebOS

いまさらな気もしますが、Palm PreとPalm WebOSについて書いてみたいと思います

Palm WebOSはその見た目どおりに、Palmという言葉が含まれているものの、ソフトウェアという観点からみると既存のPalmOSとは完全に別物です。ただし、そのコンセプトが過去のPalmOSから遠く離れたものであるかというと、必ずしもそうではなく、デザインコンセプトは継承されていると思います。

Palmの思想を端的に表したものにZen of Palmというものがあります。開発者の方は読んだことがあるかもしれませんし、ユーザの方も名前は聞いたことがあるかもしれません。残念ながら全文の日本語訳は存在しないようですが、概要を翻訳したものがPalmFanにて公開されています
この中で

ティーカップに山を入れるには?
という問いがあり、
いくつかのダイヤモンドを掘り出し、それをカップに入れよ
という答えが示されています。また問6以降では如何に顧客が真に求めているものを抽出し、現在の技術を踏まえた上で最適なバランスの製品を提供するのが重要であるかが示されています。

さて、PalmOSが最初にデザインされた当時の状況を考えてみましょう。当時、顧客が必要としていたのは、高速なメモ帳、予定表、コンタクトリスト、ToDoリスト、そして長い駆動時間でした。そのため、Palmは当時の技術と照らし合わせて、非力なプロセッサ上で軽く機能を絞り込んだ(悪く言えば貧弱な)OSをデザインしたと考えられます。つまり当時は高速であることと駆動時間が長いことがダイアモンドであったと考えられます。しかし、当時価値のあったものがその後もずっと現在まで価値があるかということは別の問題です。

まず、現在の状況を考えてみましょう。現在では様々なサービスがWeb上で提供され、多くのユーザ(特に潜在的にSmart Phoneのユーザとなりうるユーザ)はこれらのサービスを使っています。これらのWeb上で提供されるサービスの一つの特徴は、ローカルにデータを保持せずに、必要な時にWeb上に保持されているデータにアクセスすることがあります。例えばGmailであればメールのデータはすべてWeb上に存在し、クライアントはデータを表示するためのディスプレイと、入力するための入力デバイスでしかありません。このようなサービスのおかげでユーザはクライアントに依存せず目的のタスクを達成することができるようになりました。しかし、このようなサービスには問題もあります。ここのサービスが別のサービスプロバイダによって運用されているために、サービス間のデータ共有や一元管理が難しいことです。
このような状況で顧客が何を求めているか考えた場合に、Web上に散在するデータを一元的に管理できるデバイスとしてPalm Preがデザインされたのは妥当であると思われます。すなわち、現在では常にWebに接続可能であり、Web上で提供されるサービスへの一元的なインターフェースを提供することがダイアモンドであると考えられます。また、近年のバッテリやプロセッサの進歩、またマルチメディア再生への要求の増加を考えると、比較的高性能なプロセッサを採用したことも妥当であると思われます。

また、過去のアプリケーションとの互換性の問題ですが、個人的には互換性はなくても問題ないと思っています。ユーザにとっての過去の資産はデータでありアプリケーションではないので類似の新規アプリケーションにデータをコンバートする方法さえ提供されえば問題ないと思われます。非常にマイナーなアプリケーションの場合はコンバータの提供は難しいかもしれませんが、メジャーなアプリケーションについてはコンバータが提供されると思われます。
また、アプリケーション資産についても、(すくなくともPalmの主張によれば)Palm WebOS上のアプリケーション開発は容易ということなので、iPhoneのようにプラットフォームが魅力的であれば新規のアプリケーションが数多く開発されていくと思われます。
また、Palmは今後iTune Storeのようなアプリケーション配布の仕組みを提供することをアナウンスしており、この恩恵が大きいと思われます。コアユーザにとっては色々なサイトを探し回ってアプリケーションを探すことは苦痛ではなく、むしろ楽しみでさえありますが、一般ユーザにとっては苦痛以外のなにものでもありません。この問題が解決されるのは非常に良いことだと思います。

ここまで、Palm WebOSを褒めてきましたが、最後に一つだけ気になっている点を指摘しておきます。PalmはPalm PreおよびPalm WebOSはあちこち点在するサービスを統合し、一元的でシンプルなインターフェースを提供すると主張していますが、この機能はOSレベルで提供されているのかが気になります。PalmがCESで行ったデモは(カードによるアプリケーションの切り替えを除けば)アプリケーションさえ作り込めば、どのOS上でも実現可能です。例えば、iPhoneでもWindows MobileでもGoogle Calenderとデバイス内の予定表のデータを同時に表示するアプリケーションを実装することは可能です。Palm Preではなく、Palm WebOSが一元的でシンプルなインターフェースを提供すると主張するのであれば(あのプレゼンではPalm PreとPalm WebOSは明確に区別されていなかったのでPalmの意図ははっきりしません)OSの提供するAPIもしくはライブラリレベルでこのような一元管理を行うアプリケーションを実装しやすい仕組みが提供されて欲しいと思います。

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